おしゃれな呼び方をすれば、タブレット。正方形の薄型ミニサイズは、カレ。ざっくばらんに呼べば、いわゆる板チョコレート。わたしは「板チョコ」という呼び方が好き。たかが板チョコ、されど板チョコと、潔く胸を張っている雰囲気が伝わるから。板チョコレートにチープなイメージしかないという方は、ショコラトリーをのぞいてみることをオススメします。
宝石みたいなボンボン・ショコラがショコラティエのイマジネーションの結晶だとすれば、板チョコレートは、ショコラティエからのストレートなメッセージといったところでしょうか。
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板チョコの愉しみは、まっすぐカカオと向き合えること。ガナッシュなどとの組み合わせを愉しむボンボン・ショコラとは違い、板チョコは直球勝負。その分、チョコレート本来の舌触りやカカオの味と香りをゆっくり堪能できます。チョコレートはカカオの品種や産地によって味わいが違うので、その違いを確かめながら、自分のお気に入りを探すのが、板チョコの愉しみ方。そのためには、カカオ含有量が高い板チョコを選びたい。同じ70%で産地の違うものを試したり、同じ産地でショコラトリーごとの違いを試したりしていくうちに、きっとチョコレートの奥深い世界にハマります。
チョコレートはワインのようだと言われます。それは、カカオ豆の品種や産地はもちろん、土壌やその年の天候条件によって味に違いが出るから。イタリアの『アメディ』やフランスの『ヴァローナ』の板チョコには、農園を限定し、厳選したカカオのみを使用した、まさにワインと同様のヴィンテージものもあります。とことんカカオにこだわった贅沢なチョコレートを味わえるのが、板チョコレートの魅力。これこそ大人のチョコレート。
板チョコにもデザインの美しさがあります。意匠を凝らした包み紙は、レトロなものあり、スマートなものありと個性豊か。その包み紙を眺めるのも愉しいけれど、さらに、薄いアルミ箔を大胆に破って、全体を眺めてみましょ。大きさはいろいろあれど、すっきりとした四角いフォルムに、縦横にまっすぐひかれた溝、ロゴなどの刻印、そんなわずかな要素のみ。それだけのデザインだけれど、あらためて眺めてみると、そのシンプルな美しさにうっとりする。凛々しい板チョコもあれば、小粋なもの、キュートなものもある。表面に掘られた刻印が控えめに、ときに力強く自己主張していて、まさに小さな広告アートです。
板チョコは、そのまま食べるのが普通だけれど、フランスの子どもたちは、朝食やおやつに、板チョコをバゲット(細長い棒状のフランスパン)に挟んで食べるのだとか。板チョコサンドイッチとでも言うのだろうか。作り方は超簡単。適当に短く切ったバゲットをさらに縦に割って開き、バターをたっぷり塗る。そこに板チョコをのせたり、挟んだりするだけ。この味が、子どもの頃の懐かしい思い出として、大人になっても忘れられないらしい。大人には大人の愉しみ方があるけれど、時には、フランスの子どもたちの真似をしてみるのも愉しいかもしれない。
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